これから住宅を購入しようと考えている方の中には、頭金が貯まらないからといって購入を諦めている方もいるのではないでしょうか。しかし、近年では頭金なしでも住宅ローンを組むことができるようになりました。本記事では、頭金なしで住宅ローンを組むメリットやデメリット、後悔しないためのポイントについて詳しく解説します。
これから住宅購入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
頭金なしで住宅ローンを組むとどうなる?
頭金なしで住宅ローンを組むということは、購入する住宅の全額をローンで賄うことを指します。つまり、自己資金は一切なしで、銀行などの金融機関から借りたお金だけで住宅を購入するということです。
頭金なしで住宅ローンを組むと、頭金を入れた時と比較して借入金額が増えることになります。借入金額が増えると、支払う利息の総額も増加し、結果的に毎月の返済額も高くなってしまいます。
たとえば、3,000万円の住宅を購入する場合、頭金が500万円あれば借入額は2,500万円ですみますが、頭金がない場合は3,000万円全額を借りることになり、支払う利息や毎月の返済額は増えてしまうのです。
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頭金なしで住宅ローンを組むメリット
頭金なしで住宅ローンを組むメリットは、以下のようなものがあります。
- ●すぐに住宅を購入できる
- ●手元に資金を残せる
- ●住宅ローン控除を活用しやすい
すぐに住宅を購入でき、タイミングを逃さずに理想の住宅を手に入れられます。また、資金を手元に残すことができたり、住宅ローン控除を活用しやすくなったりします。
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
すぐに住宅を購入できる
頭金なしで住宅ローンを組むと、頭金が貯まっていなくても理想の住宅をすぐに購入することができます。住宅を購入するタイミングは人それぞれですが、結婚や出産など人生の節目に合わせて住宅を購入したいと考える人も多いでしょう。 また、賃貸物件に住んでいる場合は、家賃を払い続けながら頭金を貯めるのは大変です。頭金なしでローンを組めば、無駄な家賃を払わずにすむというメリットもあります。
一方で、頭金が貯まっていない状態で無理に住宅を購入するのは避けたほうがよいでしょう。 ライフプランをしっかり立てて、計画的に住宅購入を進めることが大切です。
手元に資金を残せる
頭金なしで住宅ローンを組むと、頭金として使う予定だった資金を手元に残すことができます。たとえば、これから教育費がかさむ時期を控えている家庭にとって、教育資金を確保しておけるのは大きなメリットといえるでしょう。
また、住宅購入後にリフォームや家具の購入など、思わぬ出費が発生することもあります。頭金分の資金があれば、そうした臨時の支出にも対応しやすいです。ただし、住宅ローンの審査では、返済能力が厳しくチェックされます。 安定した収入があり、借入金額が年収の範囲内に収まっている場合でないと、審査に通るのは難しいでしょう。
住宅ローン控除を活用しやすい
住宅ローン控除とは、住宅ローンの借入金額に応じて所得税が軽減される制度です。控除期間は最長13年間で、最大409.5万円の控除が受けられます。頭金なしでローンを組んだ場合、借入金額が増えるため、より多くの控除を受けられる可能性があります。年収が高く、もともと支払う所得税が多い人にとっては、大きなメリットになるでしょう。
ただし住宅ローン控除の適用には、いくつかの条件があります。返済期間が10年以上であることや、住宅の床面積が一定以上であることなどです。控除を受けるためには、これらの条件をクリアしている必要があります。このように、頭金なしで住宅ローンを組むメリットはいくつかありますが、それぞれ注意点もあります。メリットだけでなくデメリットについても理解したうえで、慎重に検討することが大切です。
頭金なしで住宅ローンを組むデメリット
頭金なしで住宅ローンを組むデメリットとしては、以下のようなものがあります。
- ●総返済額が大きくなり月々の返済額が高くなる
- ●借入金利が高くなる可能性があること
- ●頭金ありと比較して住宅ローンの審査が通りにくくなる
- ●債務超過する可能性がある
総返済額が大きくなり月々の返済額が高くなります。また、借入金利が高くなる可能性があったり、3つ目は、頭金ありのローンと比べて審査が通りにくくなったりします。
それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。
総返済額が大きくなり月々の返済額が高くなる
頭金なしで住宅ローンを組むと、当然ながら借入額が大きくなります。借入額が大きくなると、支払う利息の総額も増え、結果的に返済の負担は重くなります。
仮に3,000万円の住宅を購入する場合、頭金なしで35年ローンを組むと、月々の返済額は約10万円です。一方、500万円の頭金を入れた場合は、月々の返済額は約8万円ですみます。
月々1~2万円の差は小さく感じるかもしれませんが、ローンの返済期間が長期にわたることを考えると、無視できない金額です。返済が苦しくなるリスクを避けるためにも、 無理のない返済計画を立てることが大切です。
借入金利が高くなる可能性がある
住宅ローンの金利は、銀行によっては借入額に対する自己資金の割合(自己資金率)によって変わることがあります。一般的に、自己資金率が高いほど信用力が高いと評価され、金利は低くなる傾向にあります。
つまり、頭金を入れずに借入額を大きくすると、自己資金率が下がるため、金利が高くなってしまう可能性があるのです。
金利が上がれば、支払う利息の総額も増えることになります。 住宅ローンを利用する際は、自分に適用される金利がどのくらいになるのか、事前にしっかりと確認しておく必要があります。
頭金ありと比較して住宅ローンの審査が通りにくくなる
頭金なしでローンを組む場合、返済能力が厳しくチェックされることになります。 特に、年収に対する借入金額の割合(借入負担率)が高いケース、審査に通らない可能性が高くなるケースもあります。
審査のポイントは金融機関によって異なりますが、おおむね年収の30~40%以内に収まっていることが望ましいとされています。 年収が500万円の場合、借入額は150~200万円以内に抑えたほうが無難でしょう。
また、勤続年数が短い、非正規雇用である、他にも借り入れがあるなど、返済能力に不安がある場合は、審査がより厳しくなる傾向にあります。 無理のない返済計画を立てられるかどうかが、審査のカギを握るといっていいでしょう。
担保割れする可能性がある
債務超過とは、借入額が担保となる住宅の価値を上回ってしまう状態を指します。 住宅の資産価値は、新築時から徐々に下がっていくのが一般的です。頭金なしで借り入れた場合、最初から借入額が大きいため、資産価値が下がった時点で簡単に担保割れを起こしてしまいます。
将来的に住宅を売却する場合、売却価格が住宅ローンの残債を下回る可能性が高くなるのです。
住宅を手放したのに、ローンが残ってしまうのは避けたいですよね。 債務超過のリスクを避けるためにも、無理のない返済計画を立てることと、物件選びにも気をつける必要があります。
頭金なしで住宅を購入する人の割合
それでは実際に、頭金なしで住宅を購入する人はどのくらいいるのでしょうか。 住宅金融支援機構の調査によると、2020年度にフラット35を利用したユーザーの平均頭金割合は22.5%でした。つまり、借入額が物件価格の77.5%に達しているということです。
物件の種類別に見ると、頭金割合が最も低いのが建売住宅で、わずか3.7%でした。次いで中古戸建が11.6%、中古マンションが11.7%と続きます。一方、頭金割合が最も高いのは注文住宅の18.8%でした。
リクルート住まいカンパニーによる首都圏新築マンション契約者動向調査の調査でも、 頭金なしで新築マンションを購入した人の割合は14.4%。新築戸建てに至っては25.6%もの人が、頭金ゼロで購入に踏み切っています。
このように、近年は頭金なしで住宅を購入するケースが増えてきているようです。低金利が追い風となり、できるだけ早く住宅を購入したいという人が増えているのかもしれません。
住宅ローンは頭金ありと繰り上げ返済どちらが得?
住宅ローンを組む際、「頭金を入れるべきか」「繰り上げ返済に回したほうがいいのでは?」と悩む人も多いのではないでしょうか。ここでは、シミュレーションを通して、どちらがお得なのかを検証してみましょう。
繰り上げ返済とは、毎月の返済額とは別に、臨時に余剰資金を返済に充てることを指します。ボーナス時など、手元に余裕資金ができた時に活用すると効果的です。
今回は以下の条件で、頭金ありのケースと繰り上げ返済のケースを比較してみました。
住宅購入額:3,000万円
年収:500万円
返済方法:元利均等返済
ボーナスタイプ:なし
返済期間:35年
金利タイプ:全期間固定金利
金利:1.89%
頭金500万円で住宅ローンを組んだ場合
まずは、頭金500万円を入れた場合のシミュレーション結果です。 頭金500万円を差し引いた2,500万円を、35年ローンで借り入れます。金利1.89%、毎月の返済額は81,411円になります。
返済総額は3,419万2,565円。支払い利息の総額は919万2,565円となりました。
頭金なしで住宅ローンを組み5年後に500万円繰り上げ返済した場合
次に、頭金なしで3,000万円を借り入れ、5年後に500万円を繰り上げ返済したケースです。金利1.89%、当初の毎月返済額は97,693円になります。5年後に500万円を繰り上げ返済すると、 以降の返済額は79,486円に減額されます。
最終的な返済総額は3,947万6,561円。支払い利息の総額は947万6,561円で、頭金ありの場合と比べて約28万円負担が大きくなります。つまり、返済額を少しでも減らすにはなるべく頭金を用意してから購入したほうが良いということです。
ただし、頭金をすぐに用意できない場合でも、繰り上げ返済をすることで返済負担を軽減することが可能です。繰り上げ返済のメリットを最大限に活かすためにも、できるだけ早いタイミングで繰り上げ返済を行いましょう。
頭金なしで住宅ローンを組んで後悔しないためのポイント
頭金なしで住宅ローンを組む際は、後悔しないためにいくつかのポイントに気をつける必要があります。大切なのは、年収や生活スタイルに見合った返済計画を立てること。ライフプランを考慮しつつ、 無理のない借入額・返済額を設定しましょう。
- ●無理のない返済計画を立てる
- ●ライフプランも考慮してシミュレーションしておく
- ●物件価格が値下がりする可能性も見込んでおく
また、金利上昇や予期せぬ出費など、想定外の事態にも備えておくことが重要です。
無理のない返済計画を立てる
住宅ローンを組む際は、まず返済計画を綿密に立てることが大切です。 年収に占める借入金の割合は、できれば30%以内に抑えるのが理想とされています。
仮に年収が500万円、金利0.475%(変動金利・元利均等返済)、返済期間35年、返済負担率30%で住宅ローンを契約したとしましょう。借入可能額は4,835万円となり、月々の返済額は11万5,000円程度となります。頭金なしでローンを組む場合は特に、 借入額が大きくなりすぎないよう注意が必要です。
また将来的に、収入が減ったり出費が増えたりするリスクも考慮しておくべきです。教育費や老後資金など、ライフイベントに合わせて必要な資金を想定し、 十分余裕をもったローン設計を心がけましょう。
ライフプランも考慮してシミュレーションしておく
先にも触れたように、住宅ローンは長期の返済になるため、ライフプランとセットで考える必要があります。特に住宅取得から10年、20年後は出費の多い時期が重なります。 教育費、老後資金、リフォーム費用など、人生の各ステージを見据えて返済計画を立てることが重要です。
多くの金融機関では、返済シミュレーションを無料で利用できます。金利の変動や繰り上げ返済など、さまざまな条件を設定してシミュレーションが可能です。 ぜひ積極的に活用して、自分の置かれた状況に即した返済プランを検討しましょう。
物件価格が値下がりする可能性も見込んでおく
購入した住宅が将来値下がりするリスクにも、あらかじめ目を向けておく必要があります。一般的に、不動産の資産価値は経年とともに下がる傾向にあります。頭金なしでローンを組むと、債務超過を起こすリスクが高まります。
住宅の売却を視野に入れている場合は特に、物件選びの段階から慎重になる必要があります。 新築時の価格が割高な物件は避け、売却しやすい立地の物件を選ぶのが賢明でしょう。また、売却時の価格下落を踏まえ、 返済期間を少し長めにとるのもひとつの手です。
まとめ
本記事では、頭金なしで住宅ローンを組む際のメリットやデメリット、後悔しないための注意点などについて詳しく解説してきました。頭金なしであっても住宅ローンを利用できるメリットはありますが、その一方でデメリットもあることを理解しておく必要があります。
総返済額の増加や金利の上昇など、トータルの負担が重くなるリスクは小さくありません。 後悔しないためには、年収やライフプランに見合った無理のない返済計画を立てることが何より大切です。住宅購入は人生の大きな決断です。 事前の準備を怠らず、信頼できる不動産・金融のプロに相談しながら、将来に不安を残さないマイホーム選びをしていきましょう。
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