この記事では、住み替えを検討している方や、住み替えに関する基本的な情報を知りたい方に向けて、住み替えの意味や方法、かかる費用などをわかりやすく説明します。記事を読むことで、住み替えに関する知識が深まり、スムーズな住み替えを実現するためのポイントが得られます。
住み替えとは
住み替えとは、現在住んでいる住居から新しい住居に引っ越すことを指します。多くの場合、不動産の売買や賃貸借契約が伴います。住み替えのパターンは様々ですが、主に以下の4つに分類されます。
- ●賃貸物件から賃貸物件への住み替え
- ●賃貸物件から持ち家への住み替え
- ●持ち家から持ち家への住み替え
- ●持ち家から賃貸物件への住み替え
それぞれのパターンには、ライフステージの変化や資産運用、ライフスタイルの変化など、様々な理由があります。住み替えを行う際には、自分の目的や状況に合わせて、適切な方法を選択することが重要です。
住み替えの方法は2パターン
住み替えを行う方法は、大きく分けて「売り先行」と「買い先行」の2つのパターンがあります。それぞれのメリットとデメリットを理解して、自分に合った方法を選びましょう。
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メリット |
デメリット |
売り先行 |
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買い先行 |
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売り先行は、資金計画を重視する人や、新しい住まいの選択肢を広げたい人におすすめです。一方、買い先行は、スムーズな引っ越しを優先する人や、売却のタイミングを調整したい人に適しています。
売り先行
売り先行とは、現在の住まいを売却してから、新しい住まいを購入する方法です。まず、不動産会社に住まいの売却を依頼し、売却が完了した後に新しい住まいを探します。売却代金を新しい住まいの購入資金に充てることができるため、資金計画が立てやすいというメリットがあります。現在の住まいに住宅ローンの残債がある方は、売却することで残債を完済できるため、新しい住まいを購入するために組む住宅ローンの審査を通しやすくすることが可能です。また、売却代金の範囲内で新しい住まいを選べるため、選択肢が広がるでしょう。
ただし、売却が予定通りに進まない可能性があり、その場合は一時的な賃貸住宅が必要になります。また、売却と購入のタイミングがずれると、引っ越しが複数回必要になる可能性があるというデメリットもあります。
売り先行は、資金計画を重視する人や、新しい住まいの選択肢を広げたい人におすすめの方法です。
【売り先行で住み替えるのがおすすめな人】
- l資金計画を重視する人
- l新しい住まいの選択肢を広げたい人
買い先行
買い先行とは、新しい住まいを先に購入してから、現在の住まいを売却する方法です。新しい住まいへの引っ越しを済ませた後、タイミングを見計らって現在の住まいを売却します。引っ越しが1回で済むため、スムーズに新しい生活をスタートできるというメリットがあります。また、売却のタイミングを調整できるため、市場の動向に合わせて売却時期を決められます。
しかし、新しい住まいのローンと現在の住まいのローンが重複する「二重ローン」のリスクに注意が必要です。また、売却価格によっては資金が不足する可能性があるため、資金計画が立てにくいというデメリットもあります。二重ローンの場合は、銀行審査の審査基準の1つである返済比率が膨らむことで、年収に余裕がないと審査承認のハードルが上がるので注意が必要です。
買い先行は、スムーズな引っ越しを優先する人や、売却のタイミングを調整したい人におすすめの方法です。
【買い先行で住み替えるのがおすすめな人】
- lスムーズな引っ越しを優先する人
- l売却のタイミングを調整したい人
- l気に入った物件を抑えたい人
住み替えにかかる費用
住み替えには、様々な費用がかかります。新しい住まいの購入価格だけでなく、仲介手数料や税金、引っ越し費用なども考慮する必要があります。費用の総額は、住まいの種類や地域、売買価格などによって大きく異なりますが、一般的には数百万円から数千万円規模になります。住み替えにかかる主な費用は以下の通りです。
- ● 新しい住まいの購入価格
● 仲介手数料(売買価格の3%+6万円3~5%程度)
● 印紙税(売買価格に応じて課税)
● 登録免許税(土地購入売買価格の1.5%、建物購入0.3%、抵当権設定0.4%売買価格の0.4%)※1
● 不動産取得税(固定資産税売買価格の3%程度)※2
● 住宅ローン関連費用(融資手数料、保証料など)
● 引っ越し費用(業者への依頼料、梱包資材代など)
● リフォーム費用(必要に応じて)
※1減税対象の物件ではさらに税率が低くなることがある。司法書士に依頼する場合は司法書士報酬も加算
※2減税対象の物件の場合、実際には不動産取得税がかからないケースが多い
これらの費用を総合的に考慮し、入念な資金計画を立てることが重要です。
家を購入する際にかかる費用・税金
家を購入する際には、以下のような費用・税金がかかります。
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費用の目安 |
仲介手数料 |
売買価格の3%+6万円 |
印紙税 |
売買価格に応じて、1万円~60万円 |
登録免許税 |
土地購入売買価格の1.5%、建物購入0.3%、抵当権設定0.4%※1 |
不動産取得税 |
固定資産税の3%程度※2 |
住宅ローン関連費用 |
融資手数料(融資額の2~3%程度)、保証料(融資額の0.1~0.4%程度)など |
引っ越し費用 |
業者への依頼料(距離や荷物量によって異なる)、梱包資材代など |
リフォーム費用 |
必要に応じて |
これらの費用・税金は、売買価格や融資額、引っ越しの規模などによって大きく変動します。仲介手数料や税金は売買価格に比例して高くなるため、高額な住宅を購入する場合は特に注意が必要です。また、住宅ローン関連費用は融資額に応じて変動します。
融資手数料は住宅ローンを契約する際に支払う手数料で、定額型と定率型があります。定額型は一定額を支払い、定率型は借入額の2.2%といったように一定割合を支払う方式です。保証料は保証会社が金融機関に代わって借入者の返済を保証するための費用で、一家前払い型(外枠方式)と金利上乗せ型(内枠方式)があります。一括前払い型は借入額の2%程度を一括で支払う、金利上乗せ型は住宅ローンの金利に0.2%程度を上乗せして支払う方式です。借入額が大きいほど負担が重くなります。
家を売却する際にかかる費用・税金
家を売却する際には、以下のような費用・税金がかかります。
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費用の目安 |
仲介手数料 |
売却価格の3%+6万円 |
印紙税 |
売却価格に応じて、1万円~60万円 |
譲渡所得税 |
売却価格から取得費、譲渡費用を差し引いた金額に対して課税(税率は所得税15%、住民税5%) |
住宅ローン繰上返済手数料 |
ローン残高の0.5~2%程度 |
不動産売却に伴う各種手数料 |
測量費用、境界確定費用、抵当権抹消費用など |
これらの費用・税金は、売却価格や譲渡所得、ローン残高などによって大きく変動します。仲介手数料や印紙税は売却価格に比例して高くなるため、高額な住宅を売却する場合は特に注意が必要です。譲渡所得税は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額(譲渡益)に対して課税されるため、譲渡所得が大きいほど税負担が重くなります。
住宅ローン繰上返済手数料は、定額の手数料を設定している金融機関、ローン残高に応じて変動する金融機関など様々です。ローン残高に応じて変動する金融機関など様々です。ローン残高が大きいほど負担が増えます。また、不動産売却に伴う各種手数料は、物件の状況や手続きの内容によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
住み替えを検討するタイミング
一般的に、住み替えを検討するタイミングとしては以下のようなものがあります。
- l結婚や出産などライフステージの変化に伴い、広さや間取りなどの住居の条件を見直すとき
- l転職や転勤など仕事の都合で、通勤時間を短縮したいと考えるとき
- l子供の成長に伴い、教育環境の充実した地域に移り住みたいと思うとき
- l老後の生活を見据えて、バリアフリー対応の住宅や利便性の高い地域を求めるとき
- l自然災害のリスクが高い地域から、より安全な場所に移りたいと考えるとき
国土交通省が実施した、生活総合調査によると、直近5年以内に住み替えを行った理由として最も多かったのは「通勤・通学の利便」で35.1%、次いで「広さや部屋数」が21.4%、「世帯からの独立」が18.2%となっています。
このことからも、ライフステージの変化や利便性の向上が住み替えの主な理由になっていることがわかります。
参考:国土交通省 生活総合調査
住み替えを行う際に起こり得るリスク
住み替えを行う際には、様々なリスクが伴います。特に注意すべきリスクとして、以下の2つがあります。
- l売却までに時間がかかる可能性がある
- l売却額が査定額よりも低くなってしまう可能性がある
これらのリスクは、住み替えの計画や資金計画に大きな影響を与える可能性があるため、十分に理解しておく必要があります。
売却までに時間がかかる可能性がある
買い先行を選択した場合、新居の購入後に現在の住まいがすぐに売却できないリスクがあります。売却に時間がかかるとその間に二重の住宅ローンや管理費が発生し、家計に大きな負担がかかります。
また、資金繰りが厳しくなることで売却価格を下げざるを得なくなり、当初の予定よりも低い価格で売却することになる可能性も。さらに売却が長引くことにより新しい生活のスタートが遅れ、精神的なストレスも増加する可能性があるという点に注意が必要です。
売り先行を選択した場合、売却が完了するまでに新しい住まいを見つけられなければ仮住まいを探す必要があるというリスクがあります。仮住まいの費用や引越し費用が追加で発生するため、経済的な負担が増加します。また、仮住まいの期間が長引くと、荷物の保管や引越しの手間が増え、生活が一時的に不便になるというリスクにも注意してください。
売却額が査定額よりも低くなってしまう可能性がある
買い先行を選択して売却価格が査定額よりも低かった場合、新しい住まいの購入資金が不足するリスクを伴います。不足を補うために追加の借り入れを行った場合、返済負担が増加します。さらに、売却価格が低いことで新しい生活に必要なリフォームや家具の購入に使える予算が減少し、生活の質に影響が出る可能性があるので注意が必要です。
売り先行を選択して売却価格が査定額よりも低かった場合、新しい住まいの購入予算が減少し、希望する物件を購入できないリスクを伴います。理想の住まいを妥協せざるを得なくなる可能性があります。また、売却価格の低下によって次の住まいに対する資金計画が狂い、仮住まいの期間が伸びることによって二重の引越し費用や生活費が増加する可能性も。これによって生活の安定性が一時的に損なわれるリスクに注意してください。
住み替えを成功させるためのポイント
住み替えを成功させるためには、様々なポイントに注意する必要があります。先に紹介したリスクも踏まえ、以下のポイントを意識することが重要です。
- l住み替えの目的を明確にする
- l十分な資金計画を立てる
- lスケジュールには余裕を持たせる
- l適正な売却価格を見極める
- l信頼できる不動産会社に依頼する
住み替えの目的を明確にする
住み替えを成功させるための第一歩は、「住み替えの目的を明確にする」ことです。住み替えには様々な理由がありますが、自分にとっての最優先事項を明らかにしておくことが重要です。
住み替えの目的を明確にすることが重要な理由は、目的に合わせて物件選びや資金計画、スケジュール調整などを行うことができるからです。例えば、子育てのために広い家に住み替えたい場合、子供の成長に合わせた間取りや、教育環境の良い立地を優先的に検討することができます。また、老後の生活を見据えて住み替える場合は、バリアフリー設計や医療機関との近接性などが重要な条件になるでしょう。
具体的な実践方法としては、家族全員で住み替えの目的について話し合い、優先順位をつけるなどです。また、目的に合わせて、必要な条件をリスト化しておくことも効果的です。
十分な資金計画を立てる
住み替えを成功させるためには、「十分な資金計画を立てる」ことが欠かせません。住み替えには、物件の購入費用だけでなく、各種税金や手数料、引っ越し費用など、様々な出費が伴います。
資金計画が重要な理由は、予期せぬ出費によって住み替えが困難になることを防ぐためです。特に、売却額が予想を下回った場合や、売却までに時間がかかった場合などは、資金繰りが厳しくなる可能性があります。また、金融機関からの借り入れを行う場合は、返済計画を立てておくことも重要です。
具体的な実践方法としては、住み替えにかかる費用を詳細にリスト化し、必要な資金を算出しましょう。その上で、自己資金や借入金、売却代金などを考慮し、入念な資金計画を立てることが大切です。
スケジュールには余裕を持たせる
住み替えを成功させるためのポイントの1つが、「スケジュールには余裕を持たせる」ことです。住み替えには、物件探しや売却、引っ越しなど、様々な段階があります。これらの作業を無理のないスケジュールで進めることが重要です。
余裕のあるスケジュールが重要な理由は、予期せぬトラブルや遅延に対応できるようにするためです。例えば、物件探しに時間がかかったり、売却までに想定以上の期間を要したりすることがあります。こうした場合でも、余裕のあるスケジュールであれば、柔軟に対応することができます。
具体的な実践方法としては、住み替えの各段階に要する期間を十分に見積もり、余裕を持ったスケジュールを組むようにしましょう。特に、売却と購入のタイミングがずれた場合の対応策を予め考えておくことが重要です。
適正な売却価格を見極める
住み替えを成功させるためには、「適正な売却価格を見極める」ことが重要です。売却価格は、新しい住まいの購入資金に直結するため、慎重に検討する必要があります。
適正な売却価格を見極めることが重要な理由は、売却価格が住み替えの資金計画に大きな影響を与えるからです。売却価格が予想を下回ると、新しい住まいの購入資金が不足してしまう可能性があります。一方、売却価格を高く設定しすぎると、買い手がつかず、売却までに時間がかかってしまうリスクがあります。
具体的な実践方法としては、複数の不動産会社から査定を取り、市場価格を把握することが重要です。その上で、物件の状態や立地条件、市場の動向などを考慮し、適正な売却価格を設定しましょう。
信頼できる不動産会社に依頼する
住み替えを成功させるためのポイントとして、「信頼できる不動産会社に依頼する」ことが挙げられます。不動産会社は、物件の売買や資金計画、各種手続きなど、住み替えのあらゆる場面で重要な役割を果たします。
信頼できる不動産会社に依頼することが重要な理由は、専門的な知識やノウハウを活用できるためです。経験豊富な不動産会社であれば、適正な売却価格の設定や、効果的な物件の売り出し方法などを提案してくれます。また、住宅ローンの審査や各種手続きのサポートも受けられるため、スムーズな住み替えが可能になります。
具体的な実践方法としては、複数の不動産会社に相談し、実績や提案内容を比較検討することが大切です。その際、自分の住み替えの目的や条件を明確に伝え、それに合った提案をしてくれる不動産会社を選ぶようにしましょう。
住み替えの場合は減税措置も上手く利用しよう
住み替えを行う際は、様々な減税措置を上手く活用することで、税負担を軽減することができます。主な減税措置として、以下の4つがあります。これらの制度を理解し、自分の状況に合わせて適切に利用することが重要です。
- l3000万円特別控除
- l買い替え特例
- lマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除の特例
- ●10年超所有軽減税率の特例
3000万円特別控除
3000万円特別控除とは、売却益が3000万円以下の場合、所得税と住民税が非課税になる制度です。この制度の対象となるのは、売却する住宅に住んでいた期間が10年以上であり、売却後2年以内に新しい住宅を取得し、住むことが条件です。
3000万円特別控除を利用することで、売却益に対する税金の負担を大幅に軽減することができます。3000万円の特別控除の利用を検討している方の中には、買い替えの新居購入で住宅ローン控除の利用を検討している方もいることでしょう。しかし、住宅ローン控除とは併用して利用できないという点に注意してください。
買い替え特例
買い替え特例とは、売却益に対する課税を繰り延べることができる制度です。この制度の対象となるのは、売却する住宅に住んでいた期間が10年以上であり、売却後2年以内に新しい住宅を取得し、住むことが条件です。買い替え特例を利用することで、売却益に対する税金の支払いを新しい住宅の売却時まで延期することができます。
マイホームの譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除の特例
マイホームの譲渡損失の損益通算及び繰り越し控除の特例とは、売却損失を他の所得と通算したり、翌年以降に繰り越したりできる制度です。この制度の対象となるのは、売却する住宅に住んでいた期間が10年以上であることが条件です。譲渡損失を他の所得と通算することで、税負担を軽減することができます。また、譲渡損失を翌年以降に繰り越すことで、将来の税負担を軽減することもできます。
10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例とは、不動産の譲渡所得に関する税制優遇措置です。不動産を10年以上所有した後に売却した場合に適用されます。譲渡所得税の軽減を目的としています。通常の長期譲渡所得税率は20%(所得税15%+住民税5%)ですが、特例が適用された場合は6,000万円以下の部分は14%(所得税10%+住民税4%)に軽減されます。なお、6,000万円超の部分は通常通り20%です。不動産が居住用であること、譲渡の前年および前々年に同様の特例を受けていないといった条件を満たす必要があります。
住宅ローンがある場合、住み替えはできる?
住宅ローンを抱えている場合でも、住み替えを行うことは可能です。ただし、いくつかの点に注意する必要があります。まず、現在の住宅ローンの残債を把握することが重要です。住み替え先の住宅を購入する際に、新たな住宅ローンを組む必要がありますが、その際、現在の住宅ローンの残債も考慮しなくてはなりません。
住宅ローンの借り換えを行うことで、金利の低い商品に切り替えたり、返済期間を延長したりすることができます。ただし、借り換えには手数料がかかるため、メリットとデメリットを慎重に検討しましょう。
また、現在の住宅を売却する際に、売却価格が住宅ローンの残債を下回る場合、差額分を自己資金で用意する必要があります。このような場合、住み替えが難しくなる可能性があるため、十分な資金計画を立てることが重要です。
まとめ
住み替えとは、現在の住まいから新しい住まいへ移ることです。住み替えには、売り先行と買い先行の2つの方法があります。住み替えにかかる費用には、家の購入時と売却時の費用・税金があります。住み替えを検討するタイミングは、ライフステージの変化などがきっかけになることが多いでしょう。
住み替えを成功させるためには、目的を明確にし、十分な資金計画を立て、スケジュールに余裕を持たせ、適正な売却価格を見極め、信頼できる不動産会社に依頼することが大切です。