人が亡くなった場合は、その人の財産は相続人が継承しますが、継承する際には手続きが必要です。手続きを行わずに継承すると、ペナルティの対象となる可能性があるため、正しい知識を身につけることが大切です。
この記事では、相続や相続税とは何なのか、相続にかかる税金などについて詳しく解説します。記事を読めば、相続についての理解が深まるため、速やかに相続を行えるほか、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
相続とは
相続とは、人が亡くなった際、その財産を相続人が継承することです。相続人には配偶者や子供などの民法に記載されている法定相続人のほか、遺言書で指定された方などが含まれます。
継承する財産はプラスの財産だけではありません。預貯金や株式、不動産といったプラスの財産、住宅ローンや自動車ローンといったマイナスの財産も継承する財産の対象です。
しかし、必ず財産を継承しなくてはならないわけではありません。相続放棄という選択肢も用意されているため、マイナスの財産が多い場合は相続放棄を選択することで財産を継承せずに済みます。
参照:e-GOV法令検索「民法」
※民法の第882条以降に相続に関する文言が記載されています
相続税とは
相続税とは、亡くなった方から各相続人が相続や遺贈によって取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を上回っている場合に課される税金です。基礎控除額の計算式は以下の通りです。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば、配偶者や子供などの法定相続人が3人の場合は「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」が基礎控除額となります。そのため、4,800万円までの相続財産については課税されません。
相続税を正しく理解するには、どのような財産が課税対象または非課税なのかを把握しておくことが大切です。両者の違いを詳しく見ていきましょう。
課税対象になる財産
課税対象になる財産とは、相続税を算出する際の基準となる財産のことです。下記の財産を合計した金額が基礎控除額を超えている場合に課税対象となります。
課税対象になる財産の範囲 |
詳細 |
財産相続 |
現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋 貸付金、特許権、著作権 |
みなし相続財産 |
死亡退職金、死亡保険金 特別縁故者への分与財産 |
贈与財産 |
①亡くなる前3年以内に行われた贈与財産 ②相続時精算課税の適用を受けた取得した贈与財産 |
参照:国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」
2023年の税制改正大綱には、亡くなる前3年以内に行われた贈与財産について3年から7年に変更する旨が盛り込まれています。まだ確定ではありませんが、相続税の負担を軽減するための生前贈与を検討している方はご注意ください。
非課税の財産
非課税財産とは、相続税の課税対象とならない財産です。具体的には、以下のような財産が対象です。
- ・墓所、仏壇、祭具など
- ・国や地方公共団体、特定の公益法人に寄附した財産
- ・生命保険金のうち「500万円×法定相続人の数」まで
- ・死亡退職金のうち「500万円×法定相続人の数」まで
参照:国税庁「財産を相続したとき」
相続にかかる税金はいくら?
相続財産の合計額が基礎控除を上回った場合は、相続税を納めなくてはなりません。相続税を納めるためのお金が足りないといった事態に陥らないためにも、どのくらいの相続税がかかるのか把握しておくことが大切です。
相続税の計算方法と相続税額の目安を解説していきます。
相続税の計算方法
相続税の計算は、大きく以下の2つのステップに分かれます。
- 1. 相続税の総額を計算する
- 2. 被相続人ごとの相続税を計算する
1.相続税の総額を計算する
まず相続税の課税対象となる課税遺産総額を算出します。
引用:国税庁「財産を相続したとき」
【計算方法】
|
参照:国税庁「財産を相続したとき」
正味の遺産額が基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えていない場合には、相続税は課されません。
2.被相続人ごとの相続税を計算する
課税遺産総額を算出したあとは、各被相続人の相続税がいくらになるのか計算します。
引用:国税庁「財産を相続したとき」
【計算方法】
|
参照:国税庁「財産を相続したとき」
相続税の税率は以下の通りです。
【相続税の速算表】
法定相続分に応ずる取得金額 |
税率 |
控除額 |
1,000万円以下 |
10% |
- |
3,000万円以下 |
15% |
50万円 |
5,000万円以下 |
20% |
200万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
2億円以下 |
40% |
1,700万円 |
3億円以下 |
45% |
2,700万円 |
6億円以下 |
50% |
4,200万円 |
6億円超 |
55% |
7,200万円 |
参照:国税庁「No.4155 相続税の税率」
上記のように相続税の計算は複雑です。基礎控除額を超えていて相続税を納めなくてはならないケースでは、税金の専門家である税理士に相談するのも選択肢の1つです。
相続税額の目安(早見表)
相続税額の目安を把握しておけば、相続が発生した場合でも落ち着いて対応しやすいです。
配偶者ありの場合と配偶者なしの場合の2つの条件で相続税額の目安をまとめました。
配偶者ありの場合
以下は結婚して配偶者がいる場合の相続税額の目安です。表内の金額は相続税の総額なので、相続人の数で割って按分します。配偶者ありのケースでは配偶者控除を利用した場合の相続税額となっています。
課税額 |
配偶者のみ |
配偶者と子1人 |
配偶者と子2人 |
3,600万円以下 |
0円 |
0円 |
0円 |
4,000万円 |
0円 |
0円 |
0円 |
5,000万円 |
40万円 |
10万円 |
0円 |
6,000万円 |
90万円 |
60万円 |
30万円 |
7,000万円 |
160万円 |
113万円 |
80万円 |
8,000万円 |
235万円 |
175万円 |
138万円 |
9,000万円 |
310万円 |
240万円 |
200万円 |
1億円 |
385万円 |
315万円 |
263万円 |
1.5億円 |
920万円 |
748万円 |
665万円 |
3億円 |
2,460万円 |
1,985万円 |
1,800万円 |
5億円 |
7,605万円 |
6,555万円 |
5,962万円 |
10億円 |
19,750万円 |
17,810万円 |
16,635万円 |
配偶者なしの場合
以下は離婚や死別によって配偶者がおらず、相続人がお子さんのみの場合の相続税額の目安です。先ほどと同様、表内の金額は相続税の総額なので、相続人の数で割って按分します。
課税額 |
子1人 |
子2人 |
子3人 |
4,000万円 |
40万円 |
0円 |
0円 |
5,000万円 |
160万円 |
80万円 |
20万円 |
6,000万円 |
310万円 |
180万円 |
120万円 |
7,000万円 |
480万円 |
320万円 |
220万円 |
8,000万円 |
680万円 |
470万円 |
330万円 |
9,000万円 |
920万円 |
620万円 |
480万円 |
1億円 |
1,220万円 |
770万円 |
630万円 |
1.5億円 |
2,860万円 |
1,840万円 |
1,440万円 |
3億円 |
9,180万円 |
6,920万円 |
5,460万円 |
5億円 |
19,000万円 |
15,210万円 |
12,980万円 |
10億円 |
45,820万円 |
39,500万円 |
35,000万円 |
上記の目安はあくまでも一例です。控除の有無といったように条件によっては目安とは異なる可能性があるので注意が必要です。
相続税以外にかかる税金
相続が発生した場合には、遺産分割や相続税の申告といったような手続きを行わなくてはなりません。これらの手続きには税金や手数料などがかかります。
具体的にどのような費用がかかるのか以下の表にまとめました。
費用の種類 |
詳細 |
登録免許税 |
不動産の名義を変更する際にかかる税金。(固定資産税評価額×0.4%) |
相続人全員の戸籍謄本 |
相続人が誰なのかを把握するための書類。1通450円 |
被相続人の除籍謄本 |
戸籍から外れたことを証明する書類。1通750円 |
相続人の戸籍の附票 |
住民票と戸籍の情報を連動させる書類。1通300円または350円 |
相続人全員の印鑑登録証明書 |
印鑑が本人のものであることを証明する書類。1通300~400円 |
相続人の住民票 |
住所や居住関係を示す書類。1通300~400円 |
被相続人の住民票除票 |
住民票から外れたことを証明する書類。1通300~400円 |
不動産の登記事項証明書 |
相続財産に不動産が含まれる場合に必要な書類。1通600円 |
固定資産評価証明書 |
上記と同様。1通300~400円 |
司法書士報酬 |
司法書士に相続手続きを依頼した場合の報酬。10万円程度 |
上記は費用の一例です。相続登記を自分で行う場合は費用を抑えられますが、司法書士に依頼した場合は数十万円の費用がかかるので注意してください。
相続税に関する手続きの流れ
相続税に関する手続きはいつ行っても良いというものではありません。期限が決まっているものもあるため、期限を過ぎてしまうことがないように、手続きの流れを把握しておくことが大切です。
期日ごとの必要な手続きについて以下にまとめました。
【7日・14日以内】
- ・死亡診断書を受け取る
- ・死亡届の提出
- ・火葬可申請書の提出
- ・世帯主の変更届の提出
- ・国民年金・厚生年金の受給停止の手続き
- ・国民健康保険・介護保険の資格喪失の手続き
【3か月・4か月以内】
- ・相続放棄・単純承認・限定承認の決定
- ・準確定申告
【10か月・1年以内】
- ・相続税の申告
- ・遺留分侵害額の請求
3か月・4か月以内に行う相続放棄・単純承認・限定承認の決定を速やかに行うためには、以下の手続きにも早めに着手することが大切です。
- ・相続人や相続財産の確定
- ・遺産分割協議・遺産分割協議書の作成
- ・相続財産の名義変更や換金
相続の税金に関するよくある質問
最後に相続の税金に関するよくある質問にお答えします。
Q.相続税はいくらまで無税?
相続税は遺産総額が基礎控除の範囲内であれば課税されません。基礎控除は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で算出します。
Q.土地の相続税はいくら?
土地の相続税も他の財産と合算して相続税を算出します。しかし、現金とは違い、土地は路線価方式または倍率方式で価値を算出するため、時価と比べて低い水準になるのが一般的です。
Q.100万円の相続税はいくら?
遺産総額が100万円の場合、基礎控除(110万円)の範囲内となっているため、相続税は課されません。
Q.相続税がかからなくても手続きは必要?
遺産総額が基礎控除の範囲内の場合、相続税がかからないので手続きは基本的に必要ありません。ただし、相続税額が0円の場合でも、控除を利用して0円になったようなケースでは、手続きが必要になることもあるので注意してください。
まとめ
人が亡くなった場合は、その人の財産は相続人が継承しますが、相続した財産に相続税が課される可能性があります。相続税を課される場合には期日までに申告しなくてはならないため、期日を過ぎないようにどのような手続きが必要なのかを理解しておくことが大切です。
相続財産に不動産が含まれているケースでは、相続税額は多額であるものの、相続税を納めるための現金が足りないという事態に陥る可能性が高いです。期日までに相続税の支払いに必要なお金を確保するためにも、相続税額がおおよそいくらになるのかも把握しておきましょう。
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