土地や建物を購入したら、翌年から納付しなければならない固定資産税ですが、マンションと一戸建てでは大きく税額が異なります。購入金額が同じ場合、マンションの方が税額は大きくなります。
また、マンションの中でも、高さ60m以上の高層マンションは、所在階に応じて固定資産税が高くなるので注意が必要です。
この記事ではマンションのほうが固定資産税が高くなるその理由や、固定資産税が軽減となる特例について詳しく解説します。
固定資産税とは?
固定資産税とは、土地や建物などの固定資産に対して課税される地方税です。毎年1月1日時点の所有者が納税義務者になります。
固定資産税評価額に対し、固定資産税率は1.4%です。なお課税対象額は各自治体が3年に1度見直しを行なっており、土地の資産価値や建物経年劣化などにより増減します。
自治体によって多少異なりますが、固定資産税評価額は毎年4月から5月頃に届く納税通知書で確認できます。同封の納付書で、一括もしくは分割(年4回)で支払います。
納税通知書が手元にない場合は、役所で土地建物の評価証明書を取得することによっても税額を確認できます。
固定資産税には軽減措置があり、新築住宅の場合は3年間(マンションは5年間)は固定資産税が2分の1になります。(2024年3月31日まで)
ほかにも固定資産税が軽減される特例があります。詳細は後半で紹介します。
固定資産税評価額の計算方法
固定資産税評価額はどのようにして決まるのでしょうか。土地と建物では算出方法が異なります。
【土地の場合】
「固定資産税路線価」が基準になります。相続税で使われる国税庁が公開している「相続税路線価」とは異なり、市町村のホームページなどで確認することができます。固定資産税路線価は地価公示価格の7割程度ともいわれています。その路線価に土地の形状や条件によって補正率をかけて価額を求ます。
参考:東京都主税局<路線価公開(23区)> (tokyo.lg.jp)
【建物】
建物は再建築したらかかるであろう建築費を計算し、経年による減点補正率をかけて算出します。建物の構造や築年数によっても異なりますが、新築当時は実際の建築費の50〜60%程度といわれています。
建物については年数に応じて評価額は下がります。ただし、どんなに古くても最終現存率といって下限が定められており、2割は残りゼロにはなりません。
軽減措置「住宅用地の特例」とは
固定資産税は、住宅用地に対して軽減措置があります。住宅用地の土地面積が200ⅿ2以下であれば「小規模住宅用地」となり、課税標準の6分の1にて計算されます。また、200ⅿ2を超える部分は課税標準の3分の1になります。
ただし、自動的に特例が適用になるわけではない点に注意が必要です。適用には、不動産が所在する市区町村へ申告が必要になります。
土地の軽減措置については期限付きの特例ではありません。住宅が存在し、用途を変更しない限り適用され続けます。ただし、適正な管理がされていないと判断されると「特定空家等」に指定され、固定資産税の軽減を受けられなくなる可能性がある点に注意が必要です。
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税率 |
小規模住宅用地 |
一般住宅用地 |
固定資産税の「住宅用地の特例) |
1.4% |
評価額の1/6 |
評価額の1/3 |
参考:土地の保有に係る税制
一戸建てとマンションどちらの固定資産税が高い?
仮に一戸建てとマンションが同じ購入価格だった場合、固定資産税はマンションのほうが高くなります。一体それはなぜでしょうか?
ここからは、マンションのほうが固定資産税が高くなる2つの理由を紹介します。
固定資産税は購入した翌年以降に納付が始まります。忘れたころに納税通知書が届くため、予期しない出費に慌てる人も少なくありません。事前に固定資産税額を把握して資金を用意しておくとよいかもしれません。
マンションが高くなる理由1:土地建物比率
マンションは一戸建てと比べて、購入価格に占める建物の割合が高くなります。そのため、住宅用地の固定資産税評価額が3分の1に軽減される特例の恩恵を受けづらく、同じ広さの一戸建てと比べて固定資産税額が高くなりがちです。
たとえば全体の価格を10としたときに、一戸建ては土地の評価価格が7割、建物の評価価格が3割だと仮定します。一方マンションは土地の評価額が3割、建物の評価額が7割だとします。一戸建ては7割の部分が6分の1(200ⅿ2の場合)になり、マンションは3割の部分しか3分の1(200ⅿ2以上)にしかなりません。
土地と建物の比率が、固定資産税に大きく影響していることが分かります。
マンションが高くなる理由2:耐用年数
建物の固定資産税は「再建築費用×経年減点補正率」で計算するため、経年による建物の資産価値の変化(下落)が税額に影響します。
建物の耐用年数はその構造に応じて異なりますが、一戸建て(木造)は22年、マンション(鉄筋コンクリート造)は47年です。
マンションのほうが償却期間が長いため(経年劣化のスピードが遅いため)、結果的に固定資産税が高い期間が長く続くことになります。これがマンションのほうが固定資産税が高くなるもう一つの要因です。
後半でも紹介しますが、新築住宅の特例はマンションのほうが一戸建てよりも軽減措置となる期間が2年長いですが、そのメリット以上にマンションのほうが固定資産税は高くなります。
固定資産税が減る制度
固定資産税には、軽減措置となる特例がいくつかありますが、不動産を購入する前にどのような特例があるのか知っておきたいものです。
ここでは代表的な特例を紹介します。たとえば、新築住宅やバリアフリーにリフォームした場合に適用されます。該当する可能性があるかチェックしてみてはいかがでしょうか。
固定資産税は新築住宅やバリアフリーにリフォームしたときなどを条件に軽減となる特例がいくつかありますが、いずれも申告しないと特例は受けられません。
新築住宅の特例
建物については、新築住宅の場合で床面積が50m2以上280m2以下であれば軽減措置を受けられます。一戸建ては3年間(長期優良住宅は5年間)、マンションの場合は5年間(長期優良住宅は7年間)固定資産税が2分の1に減額されます。適用期間は2024年3月31日までです。
なお、自動的に軽減措置が適用になるわけではなく、市区町村へ申告が必要になる点に注意が必要です。申告の際、長期優良住宅の場合は、長期優良住宅認定通知書のコピーを添付して申告する必要があります。
新築住宅の特例は、建物の部分のみの軽減措置です。土地に関しては新築でも中古でも住宅用地であればその面積に応じて6分の1〜3分の1になります。また中古住宅はその経年劣化や年数に応じて建物の評価額が小さくなるため、新築のほうが固定資産税が安いとはいい切れません。
中古住宅の場合は、所有者である売主へ確認すれば固定資産税額が分かるため、心配な場合は聞いてみるのも一つの手でしょう。
バリアフリーにリフォーム
既存住宅の性能向上を促進するために、バリアフリーや耐震、省エネなどを目的としたリフォームを行なった場合は、工事年度の固定資産税を減額する特例措置を活用できます。現行の措置が延長となっており、適用期間は2024年3月31日までです。
各工事の固定資産税の減額割合と工事のイメージは以下の通りです。
区分 |
固定資産税の減額割合 |
工事のイメージ |
耐震 |
1/2 |
耐震強度を高めるために筋交いの設置をする |
バリアフリー |
1/3 |
洗面所などの出入口を車いすが入れるように拡幅 |
省エネ |
1/3 |
従来のガラスを高断熱の複層ガラスに取り替える |
長期優良住宅化 |
2/3 |
耐震改修(もしくは省エネ改修)と劣化対策をあわせて行なう。 |
個人が自己の居住用建物のバリアフリー改修工事を行なう場合は、所得税額が特別控除される特例もあります。適用期間は2023年12月31日までです。
バリアフリー改修にかかる所得税額の特別控除 |
控除割合 |
一定のバリアフリー工事の標準的な工事費用相当額の200万円まで |
10%を控除 |
一定のバリアフリー工事の標準的な工事費用相当額の200万円超の部分と一定のバリアフリー工事と同額を上限に増改築を行なう場合の工事費用の合計額(上限1,000万円) |
5%を控除 |
長寿命住宅(200年住宅)税制の創設 (登録免許税・不動産取得税・固定資産税)
そのほかの減免
固定資産税は地方税のため、自治体ごとに減免措置を行なっているケースがあります。たとえば災害による被害をうけた場合や、65歳以上で一定の条件を満たす場合など高齢を要件としている減免措置もあります。
詳しくはお住いの自治体のホームページや窓口で確認してください。参考までに、大阪市のケースを紹介します。
【大阪市】
減免となる条件
●災害による被害を受けた場合
- ・一定の要件をみたす65歳以上
- ・特別障がい者
- ・寡婦またはひとり親の方
- ・生活扶助を受給している場合
高層マンションの固定資産税に関する注意事項
以前は同じマンションであれば、固定資産税額は階数に関係なく計算されていました。つまり1階でも最上階でも専有面積が同じであれば、固定資産税額は同額でした。
しかし高層マンションは高層階であればあるほどその資産価値は高く、販売価格も大きく異なります。そのバランスを是正するために、高さが60mを超える高層マンション(居住用超高層建築物)については「階層別専有床面積補正率」を反映して計算することになりました。2017年1月2日以後に新築された居住用超高層建築物から適用になっています。
階層別専有床面積補正率とは、居住用超高層建築物の1階を100として、階が1つ増えるごとに、10/39(0.2564)を加算して計算します。
高層マンションを購入する場合は、その購入代金だけでなく固定資産税についても試算しておくことをおすすめします。
忘れてはいけない都市計画税
都市計画税とは、市街化区域等に所在する土地建物の所有者に対して課税される地方税です。固定資産税評価額に対して税率は0.3%で算出します。
建物に対する軽減措置はありませんが、住宅用地の場合特例により軽減措置があります。小規模住宅用地(200m2以下)は評価額に対し3分の1、200m2を超える部分については3分の2になります。
あらためて固定資産税と都市計画税について比較してみると以下のようになります。
|
固定資産税 |
都市計画税 |
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税率 (固定資産税評価額に対する) |
1.4% |
0.3% |
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新築住宅の特例 (2024年3月31日まで) |
新築一戸建て |
3年間は固定資産税が1/2に減額 (長期優良住宅は5年間) |
なし |
新築マンション |
5年は固定資産税が1/2に減額 (長期優良住宅は7年間)
|
なし |
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住宅用地の特例 (2024年3月31日まで) |
小規模住宅用地 土地面積が200ⅿ2以下 |
評価額の1/6 |
評価額の1/3 |
一般住宅用地 土地面積が200ⅿ2超 |
評価額の1/3 |
評価額の2/3 |
まとめ
固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日の所有者に対して課税される税金です。不動産を購入したら毎年かかるため、購入する前にある程度想定しておく必要があります。
マンションは一戸建てに比べて固定資産税が高い傾向があります。ローン返済以外にも管理費や修繕積立金などの支払いもあるため、購入価格以外に諸費用や税金がいくらかかるのか試算しておくことをおすすめします。
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