不動産の購入では、土地や建物価格にだけ注目するのではなく、高額になりやすい税金も事前に把握して資金計画に組み込んでおくのが大切です。不動産を購入し課せられる税金には、購入時に課せられる税金と、所有してから課せられる税金があり、困惑する方も少なくありません。そこで本記事では、不動産の購入時と購入後に課せられる税金、軽減の特例について詳しく解説します。最後には税金以外に必要な費用を解説しているので、全体的な資金費用をイメージできるでしょう。

不動産を購入時に課せられる3つの税金

不動産の購入時に課せられる税金は、以下の3つです。

税金の名称

概要

登録免許税

不動産登記時に課せられる税金

印紙税

不動産売買契約書のような課税文書の作成で課せられる税金

消費税

不動産の購入時に課せられる税金(建物のみ)

 それぞれを詳しく解説します。

登録免許税

登録免許税とは、土地や建物といった不動産を登記する際に課せられる税金です。 

不動産登記のなかで登録免許税が課せられるものには以下の3種類があり、それぞれで税率が異なります。 

登記の種類

内容

税率

計算式

所有権保存登記

新築住宅の所有者を登記簿に明示する登記

0.15%

固定資産税評価額×所定の税率

所有権移転登記

土地や建物の所有権が変わったときに行う登記

建物の売買の場合:0.3%

土地の売買の場合:2%

抵当権の設定登記

住宅ローンの契約に対して、借主と金融機関の間で結ばれる登記

0.1%

住宅ローンの借入額×所定の税率

土地の所有権移転登記以外は、2025年3月31日まで軽減税率が適用されています。 

土地つき新築住宅を住宅ローンを組んで購入する際には、上記の3つの登録免許税が課せられるということです。 

また、所有権移転登記と所有権保存登記の計算では、固定資産税評価額を把握する必要があります。固定資産税評価額は、固定資産税や不動産取得税、都市計画税を算出する際に用いられる基準価格です。新築住宅では、固定資産税評価額が未確定ですが、目安としては建築費のおよそ60%くらいです。

印紙税

印紙税とは、不動産売買契約書や建築工事請負書、住宅ローンの金銭消費賃貸契約書など、課税文書を取り交わす際に納める税金のことです。課税文書に印紙を貼り付け、押印または署名すると納税になります。 

印紙税は、以下のように契約金額によって決まります。 

契約金額

税額(軽減税率なし)

税額(軽減税率あり)

500万円超〜1,000万円以下

10,000円

5,000円

1,000万円超〜5,000万円以下

20,000円

10,000円

5,000万円超~1億円以下

60,000円

30,000円

1億円超〜5億円以下

100,000円

60,000円

5億円超〜10億円以下

200,000円

160,000円

2025年3月31日までの間に作成される契約書には、軽減税率が適用されます。

消費税

消費税は、商品を購入したりサービスを受けたりした際に課せられる税金です。不動産取引では、主に以下の内容が消費税の課税対象になります。 

  • 建物の購入費用
  • 建物の建築工事やリフォーム費用
  • 仲介手数料
  • 住宅ローンの事務手数料 など 

また、土地の購入代金や火災保険料などは、消費税の課税対象ではありません。 

消費税の課税対象である建物ですが、以下の表のように建物でも消費税が非課税になる場合があります。 

 

不動産の種類

売主が個人の場合

売主が不動産会社の場合

土地

非課税

非課税

新築戸建て

ー(※)

課税

中古戸建て

非課税

課税

投資用の戸建て

課税

課税

新築マンション

ー(※)

課税

中古マンション

非課税

課税

投資用マンション

課税

課税

※個人が新築物件を販売することはないため。 

個人が不動産売買をする場合には、基本的に消費税が非課税になります。 

しかし、投資用戸建てと投資用マンションの場合のみ課税されます。投資用物件では、収益が発生していると考えられるので、消費税の課税対象になります。

不動産を購入したあとに課せられる3つの税金

不動産は、購入するときだけでなく購入後にも税金が課せられます。

具体的に課せられるのは、以下の税金です。 

  • 不動産取得税
  • 固定資産税
  • 都市計画税 

それぞれ詳しく解説します。

不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を取得した際に課される税金で、取得した不動産が所在する都道府県に対して納税します。不動産の取得には、土地の購入や贈与、交換、あるいは、建物の建築と増改築が該当します。ただし、相続と法人の合併により取得した不動産には課税されません。 

納税通知書は、不動産を購入してから数か月後に届きます。 

不動産所得税の計算式は、以下の通りです。 

固定資産税評価額×税率=不動産取得税

 固定資産税評価額は、各市町村の固定資産税課税台帳を閲覧するか、毎年4月頃に届く固定資産税の課税明細書で確認できます。しかし、新築住宅の場合には、購入する前に確認できないため、建築費のおよそ60%を目安として考えておきましょう。 

不動産取得税の税率は以下の通りです。 

土地と住宅(住居用)

3%(2024年3月31日までの軽減措置)

上記以外

4%

上記の計算式と税率で不動産所得税を算出できますが、以下のように一定金額に満たない場合には課税されません。 

不動産の種類

対象の金額

土地

10万円未満

住宅

新築・増築・改築

23万円未満

そのほか

12万円未満

面積は基準にならず、金額でのみ判断されます。

固定資産税

固定資産税は、1月1日時点で不動産を所有している人に課せられる税金です。土地と建物を所有している場合には、どちらの固定資産税も毎年課税されます。 

固定資産税の計算式は、以下の通りです。 

固定資産税評価額×税率1.4%=固定資産税

固定資産税評価額は固定資産課税台帳に登録されており、3年ごとに見直されます。そのため、必ずしも毎年同じ金額がかかるとは限らず、3年に一度は税額が変わる可能性があります。地価(土地の価格)が上昇すれば、土地に対する固定資産税は高くなるでしょう。 

建物に関しては税金が徐々に安くなる傾向にあります。なぜなら、築年数が古くなるにつれて建物の価値が下がるからです。 

中古物件や土地の場合は、前年の固定資産税評価額を参考にできますが、新築時は評価額がわからないため、建築価格のおよそ60%と仮定して計算します。

都市計画税

都市計画税は、1月1日時点で不動産を所有している人に課せられる税金で、都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てます。 

都市計画税の計算式は、以下の通りです。 

固定資産税評価額×税率0.3%=都市計画税

都市計画税の対象となる地域は市街化区域のみと限られています。そのため、市街化区域以外に住んでいる人には課税されません。課税される地域によっても税率が異なるので、不動産会社や市区町村の役場で確認してみましょう。

軽減できる税金

軽減できる税金には、主に以下の3つがあります。

  • 不動産取得税
  • 固定資産税
  • 都市計画税 

それぞれ詳しく解説します。

新築住宅であれば不動産取得税は軽減される

不動産取得税に関する軽減措置で、新築住宅を取得する場合は、固定資産税評価額から1,200万円(長期優良住宅の場合は1,300万円)の控除が可能です。 

この軽減措置の適用には、住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下であることが条件とされています。また、新築住宅を購入したからといって自動的に軽減措置が取られるわけではなく、取得した不動産の所在地を管轄している都道府県税事務所に自ら申請を行う必要があります。 

購入した新築住宅の固定資産税評価額が1,200万円以下であれば、不動産取得税が非課税になるということです。

固定資産税の軽減割合

固定資産税に対しても一定の条件のもと、建物と土地でそれぞれ軽減措置が設けられています。 

住宅の種類

控除期間

控除額

建物

一般の新築住宅

3年間

固定資産税に対して120㎡までの部分×1/2を控除

3階建て以上の中高層耐火住宅(マンション)

5年間

土地

小規模住宅用地(一般住宅の床面積200㎡以下の部分)

固定資産税評価額の1/6

一般住宅用地(一般住宅の床面積200㎡以上の部分)

固定資産税評価額の1/3

固定資産税評価額には、控除される期間が決まっており、一般的な新築住宅であれば4年目以降は通常の固定資産税が課税されます。

都市計画税も軽減の対象

都市計画税も、固定資産税同様に減税可能です。 

ただし、都市計画税は土地に対してのみ軽減措置が設けられています。 

200㎡以下の部分

固定資産税評価額の1/3

200㎡以上の部分

固定資産税評価額の2/3

都市計画税は、そもそも課税されない場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

不動産購入時にかかる税金以外の費用

不動産購入時にかかる税金以外の費用には、以下の4つがあります。 

  • 仲介手数料
  • 司法書士費用
  • 火災保険
  • ローン手数料 

これらの費用を把握しておくと、不動産購入時の全体的な費用をイメージできるでしょう。 

それぞれ詳しく解説します。

仲介手数料

仲介手数料とは、不動産仲介会社に不動産売買を依頼し、売買契約を締結した際に発生する成功報酬のことです。 

仲介手数料の限度額は宅地建物取引業法で決められており、以下の計算式で算出します。 

売買価格

仲介手数料の上限額(消費税等別途)

200万円以下の場合

売買価格×5%

200万円超〜400万円以下の場合

売買価格×4%+2万円

400万円超の場合

売買価格×3%+6万円

あくまでも上限額であるため、不動産会社によっては交渉次第で仲介手数料を安くしてくれる可能性があります。

司法書士費用

司法書士費用とは、所有権保存登記や抵当権設定登記など、登記関係を司法書士に依頼した場合にかかる費用のことです。 

司法書士費用は、およそ4万〜20万円ほどかかり、依頼する司法書士や依頼内容によって異なります。登記関係は購入者自身でもできますが、内容が複雑なため、登記のやりとりに慣れている司法書士に依頼するのが一般的です。 

登記関係でミスが起こると、住宅の引渡しや住宅ローンの手続きがスムーズに行えません。そのため、ミスを防ぎスムーズに取引を完結させるためにも、登記に慣れている司法書士への依頼をおすすめします。

火災保険

火災保険は、住宅を保有した際には必ず入る必要があります。万が一、住宅火災がおきた場合や落雷や台風などの自然災害で被害を受けた場合に対応しており、被害総額が大きくなりやすい住宅を所有する上で欠かせない保険です。 

住宅ローンの保険期間は、最長5年と決められており、1年ごとの更新もできます。火災保険に付帯する保険で地震保険がありますが、地震保険への加入は任意です。 

ローン手数料

ローン手数料とは、金融機関から住宅ローンの融資を受ける際にかかる手数料のことです。手数料の額は金融機関によって異なりますが、およそ3万〜5万円が相場です。 

ただし、住宅ローンを組む際にかかる諸費用には、ローン手数料だけではなく、印紙税やローン保証料なども必要になります。 

ローン手数料の安さだけで決めるのではなく、そのほかの諸費用がいくらかかるか確認して総合的に判断してみてはいかがでしょうか。

まとめ

本記事では、不動産の購入時にかかる税金に関して詳しく解説しました。 

不動産購入時には、主に以下の3つの税金が課せられます。 

税金の名称

概要

登録免許税

不動産登記をしてもらう際に課せられる

印紙税

不動産売買契約書のような文書に対して課せられる

消費税

購入した不動産の建物部分に課せられる

これら以外にも、不動産取得税や固定資産税など、不動産購入後にもさまざまな税金がかかります。 

とくに不動産取得税は大きな税金になる可能性もあるため、新築住宅の軽減措置が適用できるかの確認をおすすめします。さらに、不動産の購入では税金以外にも費用が課せられるため注意が必要です。細かな税金を知りたい方は、税理士へ相談への相談をおすすめします。 

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