金融機関で住宅ローンを組む際、基本的には団体信用生命保険(以下、団信)への加入が義務付けられています。おそらく、契約者のほとんどは何らかの生命保険に入っているでしょうから、「新たに生保に入る必要があるの?」と疑問に感じるかもしれません。
団信と通常の生保との違いのほか、団信のメリットや種類、加入時の注意点などについてご説明します。
団体信用生命保険とは?
団信とは、住宅ローン契約者に万が一のことがあった際、家族や家を守るための保険のことです。住宅ローンを使うと、契約者の年収の7〜10倍のお金を借りることができるため、借入額は高額になります。また、返済期間は数十年に及ぶことから、契約時点では健康でも、その後病気で働けず収入がなくなったり、最悪の場合は亡くなってしまったりする恐れがあります。そうなれば、せっかく手にした家を手放さなくてはなりません。そんなリスクから家族と家を守ってくれるのが、団信です。
団体信用生命保険の仕組み
なぜ団信に入るとリスクがなくなるのでしょうか。契約者が死亡した場合、住宅ローンの残債に相当する保険金が金融機関に支払われ、借入金がゼロになるためです。団信とは、契約者に代わってローン返済の肩代わりをしてくれる保険と考えるとわかりやすいでしょう。
団体信用生命保険への加入は必須?
民間の金融機関で住宅ローンを組む際には、団信への加入は必須です。フラット35のように住宅金融支援機構が提供している住宅ローン利用時には加入が任意です。しかし、借入額が高額であることから、万が一、返済不能になるリスクを考えると加入することが好ましいでしょう。
住宅ローンとセットで加入することから、通常は団信単体での保険料はかかりません。「住宅ローンの返済=保険料の支払い」といったイメージです。しかし契約者の年齢が高かったり、次章で紹介する特定疾病補償特約付きの団信に加入した場合は、住宅ローンに上乗せという形で保険料が発生します。上乗せ率は、だいたい0.1%〜0.3%ほどです。
団体信用生命保険の主な種類
団信にはさまざまな商品があります。代表的なものをご紹介しましょう。
一般団体信用生命保険
ローン契約者が死亡もしくは各保険会社が定める高度障害状態になったときに、残債分の保険金が金融機関に支払われる保険です。これによってローンは完済となります。最低限の保障がついたスタンダードな保険です。
生保と同様、団信においても特定疾病補償特約のついた商品もあります。必要に応じて、検討してみるのも良いでしょう。
3大疾病特約付き団体信用生命保険
一般団信の条件である「死亡もしくは高度障害状態」に加え、三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)によって所定の状態になった場合にも、保険金によって残債がゼロになります。保険金支払いの条件は保険会社によって異なります。
8大疾病特約付き団体信用生命保険
死亡もしくは高度障害状態および三大疾病に加え、さらに5つの重度慢性疾患(高血圧症・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎)によって所定の状態になった場合にも、保険金によって残債が完済されます。保険金が支払われる条件が生命保険会社によって異なります。
全疾病保障特約付きなどの団体信用生命保険
一般の団体信用生命保険(死亡・所定の高度障害の保障)に加え、保険期間中に病気・ケガで所定の就業不能状態となった際にローンの返済を保障する保険です。
ワイド団体信用生命保険
正式名称を「加入条件緩和割増保険料適用特約付団体信用生命保険」と言い、健康上の理由で一般団信に加入できない人向けの商品です。ワイド団信は通常の団信よりも加入条件が緩いことから、持病がある人でも保険に入れる可能性があります。しかし金利の上乗せ率は、一般団信よりも上がります。住宅ローンを契約する金融機関によっては扱っていないことがあるので、確認してみましょう。
団体信用生命保険のメリットを3つ
団信に加入するメリットを3つ確認しましょう。
1:万が一の時に返済義務がなくなる
団信に加入して得られる最大のメリットです。住宅ローンの契約者が返済不能の状況に陥った場合、本人にも家族にも返済義務がなくなります。そのため家族への経済的負担をなくすことができますし、家を失う心配もありません。
2:所得税の納税義務がない
一般的な生命保険では、満期で保険金を受けると保険料の負担者や受取人により、所得税もしくは贈与税の対象になります。つまり、保険金を受け取ることで税申告と納税が発生するわけです。一方で団信の場合は納税義務は発生しません。
3:既存の生保と組み合わせて補償内容を強化できる
前述のように特定疾病補償特約付きの商品があることから、現在加入している生保の保障内容を補うことができます。
加入時の注意点
団体信用生命保険に加入する際には、いくつかの注意点があります。
1:健康状態によっては加入できない可能性がある
団信は生命保険の一種ですから、契約者に持病があったり、高齢であったりする場合には加入が難しいことがあります。加入条件については住宅ローンを組みたい金融機関によって異なるため、確認してみてください。加入が難しい場合の対応については、次章にて詳しくご説明します。
2:加入後に契約内容の変更はできない
一度契約した内容の変更はできません。たとえば、一般団信で契約して、その後「やっぱりがん特約もつけておきたい」はできませんので、契約前によく考えましょう。
3:免責事項をよく確認する
団信に加入する際には、各金融機関が定める保険の免責事項をよく確認しましょう。たとえば、契約者の故意によって高度障害状態になったり、保険の責任開始日前に契約者ががんにかかったりした場合、保険金を受け取れないことがあります。
団体信用生命保険に入れなかった場合
契約者と家族を守る心強い存在である団信ですが、契約者の持病や年齢によっては加入できないことがあります。対策をご紹介します。
ワイド団体信用生命保険を利用する
ワイド団信は加入条件が緩いため持病がある方でも入れる可能性があります。
配偶者を連帯保証人として夫婦で加入する
たとえば契約者本人に持病があり契約が難しい場合、同居する配偶者を連帯保証人として住宅ローンを組んだり、団信に加入できたりする可能性があります。ただし万が一債務者が返済不能の状態となった場合、連帯保証人となった配偶者が返済義務を負う点には注意が必要です。
団信加入が任意の住宅ローンを利用する
基本的には住宅ローンでの借入額は高額のため、団信加入が義務付けられています。しかし中には団信への加入が任意であることがあるので、そうした形で住宅ローンを組む手段があります。しかし、団信なしで住宅ローンを組むリスクは受け入れる必要はあります。
他の生命保険で代用する
団信へ加入する目的は、万が一の際に家族と家を守るための「保険」を得ることです。したがって、現在入っている生保の保障で補えるのであれば、問題はありません。
まとめ
団信の概要をご説明しました。残債の返済といったスタンダードな保障内容の商品のほか、病気やケガのカバーをしてくれるものもあり、種類は豊富です。どのタイプの保険に加入するのが良いかは個人の事情によるところが大きいため、専門家に質問することをお勧めします。
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