住宅購入は物件価格以外の諸費用が意外にかかることを知って、不安に感じていませんか?諸費用はおおよそ新築物件で物件価格の3.0~6.0%、中古物件で6.0~9.0%といわれています。
しかし、諸費用はやり方次第では抑えることも可能です。この記事では、住宅購入の諸費用とは何かのほか、諸費用のモデルケースを物件別に紹介。諸費用を抑えるコツも解説しています。住宅購入を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
住宅購入の諸費用とは
住宅を購入するためには住宅購入代金以外に諸費用も必要です。代表的な諸費用としては、住宅ローンを利用するときにかかる融資事務手数料や、登記費用、印紙税などがあります。
また、購入する物件の種類によっては、発生しない諸費用もあります。例えば軽減措置によって不動産取得税がかからない、仲介会社を介さずに購入すれば仲介手数料がかからないといった場合です。
住宅購入時の諸費用は意外に高額なため、物件選びのときにはどのような物件の種類を選ぶのかも大切です。
住宅購入の諸費用の内訳
住宅購入の諸費用は、物件の種類によって必要なもの、不要なもの、場合によっては必要なものがあります。まずは物件の種類別に、諸費用の有無について確認しましょう。
|
注文住宅 |
新築マンション |
中古一戸建て |
中古マンション |
印紙税 |
○ |
○ |
○ |
○ |
登録免許税 |
○ |
○ |
○ |
○ |
司法書士への報酬 |
△ |
△ |
△ |
△ |
不動産取得税 |
△ |
△ |
△ |
△ |
固定資産税精算金 |
△ |
△ |
○ |
○ |
仲介手数料 |
△ |
○ |
○ |
○ |
修繕積立基金 |
× |
○ |
× |
× |
以下、住宅購入の諸費用についてそれぞれ詳しく解説します。
売買契約書の印紙税
印紙税とは、金銭のやりとりで作成する領収書や契約書などの課税文書に対して、発生する税金です。印紙税は一般的に、取引額に応じた金額の印紙を課税文書に貼り付け、消印をすることで納付が完了します。
印紙税が必要になる書類は印紙税法によって定められており、住宅購入にあたっては以下のようなケースでそれぞれ必要になります。
- ・土地や建物を売買する際の売買契約書
- ・注文住宅を建てるときの建設工事請負契約書
売買契約書や、建設工事請負契約書の記載金額別の印紙税額は次の通りとなります。
売買契約書・建設工事請負契約書の記載金額 |
印紙税額 |
軽減税率が適用された印紙税額 |
10万円超え50万円以下 |
400円 |
200円 |
50万円超え100万円以下 |
1,000円 |
500円 |
100万円超え500万円以下 |
2,000円 |
1,000円 |
500万円超え1,000万円以下 |
1万円 |
5,000円 |
1,000万円超え5,000万円以下 |
2万円 |
1万円 |
5,000万円超え1億円以下 |
6万円 |
3万円 |
1億円超え5億円以下 |
10万円 |
6万円 |
参考:国税庁
2014年4月1日から2024年3月31日までの間に作成した、以下の要件を満たす契約書については軽減税率が適用されます(軽減措置)。
- ・売買契約書のうち、契約書に記載された契約金額が10万円を超えるもの
- ・建設工事請負契約書のうち、契約書に記載された契約金額が100万円を超えるもの
所有権の保存・移転にかかる登録免許税
登録免許税とは登記手続きの際に納める税金のことを言います。土地や建物を自分のものと主張するためには、登記が必要です。新築住宅のよう最初に行われる登記のことを所有権保存登記、中古住宅のように所有権が売主から買主に移るときに行う登記のことを所有権移転登記といいます。
登録免許税は、課税標準額(登記時の価格)に以下の税率を乗じて計算します。
登記の種別 |
登録免許税率 |
軽減税率 |
土地の所有権移転登記 |
課税標準額×2.0% |
課税標準額×1.5% |
新築物件の所有権保存登記 |
課税標準額×0.4% |
課税標準額×0.15% |
中古物件の所有移転存登記 |
課税標準額×2.0% |
課税標準額×0.3% |
参考:国税庁
以下の登記が以下の要件を満たした場合、軽減措置(軽減税率)が適用されます。
- ・2023年3月31日までの間に受けた土地の所有権移転登記
- ・2024年3月31日までの間に、住宅を取得して自身の住居としたときの所有権保存登記や所有権移転登記
司法書士への報酬
土地や建物の所有権保存登記や所有権設定登記は自分でもできますが、書類をそろえたり、登記申請書を作成したりと労力がかかるため、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士に登記を依頼する際には報酬の支払いが必要になります。
日本司法書士会連合会の調査によると、関東地区の場合で、所有権移転登記の平均額は約5万円~約9万円、所有権保存登記で約2万円台半ばとなっています。
不動産取得税
土地や建物を購入したときに一度だけ支払いが必要になる地方税のことです。土地や建物の課税標準額に4.0%(2024年3月31日までは3.0%)を乗じて計算します。
ただし2024年3月31日までに取得した場合、新築の住宅は課税標準から1,200万円が控除、中古住宅は築年数に応じた控除額が適用されます。また土地の場合は、課税標準額が2分の1になります。
2023年1月に3,000万円の住宅を購入、1,200万円の控除が適用された場合、支払う不動産取得税は54万円です。
固定資産税清算金
固定資産税は1月1日時点で不動産を持っている方に課されます。仮にこの不動産を3月に購入した場合、買主はその年、固定資産税は支払わなくて良いことになってしまいます。
不動産を売却した売主に固定資産税の負担が生じないように、買主が固定資産税を日割りで精算して支払うのが固定資産税清算金です。
建物の種類によって異なりますが、例えば2,000~4,000万円程度の一戸建ての固定資産税はおおよそ10万円~15万円です。仮に2023年に入って100日経過後に物件を引き渡した場合、約7万3,000円~約10万9,000円の固定資産税清算金の支払いが必要になります。
仲介手数料
中古住宅のように仲介会社と媒介契約を結んで住宅購入をする場合、仲介手数料の支払いが必要です。新築でも広告の取引様態が「仲介」あるいは「媒介」となっていれば仲介手数料がかかります。
仲介手数料は宅建業法によって以下の通り上限が決まっています。
取引物件価格(税抜) |
仲介手数料の上限 |
400万円超 |
取引物件価格(税抜)×3.0%+6万円+消費税 |
200~400万円以下 |
取引物件価格(税抜)×4.0%+2万円+消費税 |
200万円以下 |
取引物件価格(税抜)×5.0%+消費税 |
修繕積立基金
新築マンション購入時に一時的に請求される費用のことです。マンションは外壁や共用部の給排水管、エレベーターなどの大規模修繕をするために、定期的に多額の費用がかかります。
修繕積立基金は、こうした大規模修繕の資金として役立てられます。
物件の規模にもよりますが修繕積立基金の相場は20万円~80万円です。
住宅ローンを組む際の諸費用の内訳
住宅を購入するときに住宅ローンを組むと、次のような諸費用がかかります。
- ・金銭消費貸借契約書の印紙税
- ・抵当権設定にかかる登録免許税
- ・司法書士への報酬
- ・融資事務手数料
- ・ローン保証料
- ・物件調査手数料
- ・火災保険料・地震保険料
それぞれ詳しく解説します。
金銭消費貸借契約書の印紙税
住宅ローンを利用するときに締結する際の契約書である金銭消費貸借契約書も、売買契約書と同様、課税文書にあたるため、印紙税が必要です。
【金銭消費貸借契約書の印紙税】
金銭消費貸借契約書の記載金額 |
印紙税額 |
10万円超え50万円以下 |
400円 |
50万円超え100万円以下 |
1,000円 |
100万円超え500万円以下 |
2,000円 |
500万円超え1,000万円以下 |
1万円 |
1,000万円超え5,000万円以下 |
2万円 |
5,000万円超え1億円以下 |
6万円 |
1億円超え5億円以下 |
10万円 |
参考:国税庁
抵当権設定にかかる登録免許税
抵当権を設定するときに登録免許税がかかります。抵当権とは債務者が返済できなくなったときに、土地や建物といった担保で弁済を受けられる権利のことです。抵当権設定にかかる登録免許税は、借入金額に税率0.4%を乗じて計算します。
登記の種別 |
登録免許税率 |
軽減税率 |
抵当権の設定登記 |
0.4% |
0.1% |
参考:国税庁
2024年3月31日までの間に、新築(増築含む)、または自身の住居として住宅を購入した場合は軽減措置(軽減税率)が適用されます。
司法書士への報酬
抵当権設定登記をする際も、司法書士に依頼するときは報酬を支払う必要があります。
日本司法書士会連合会の調査によると、関東地区の場合で、抵当権設定登記の平均額は約7万5,000円です。
住宅ローン関連費用
住宅ローン関連費用とは、融資事務手数料やローン保証料を指します。
融資事務手数料は、住宅ローン借入時に生じる事務手続きの手数料として、金融機関に支払います。借入額に対して、1.0%や2.0%のように一定割合を支払う「定率型」と、借入金額にかかわらず定額を支払う「定額型」があります。
一方、ローン保証料は、保証会社が代わりに返済する契約を締結するための費用です。これにより、債務者が住宅ローンの返済ができなくなった場合、保証会社が債務者に代わって金融機関に返済をします。なお、保証会社が債務者に代わって返済をしたからといって、債務者がその後の弁済を免れるわけではありません。
住宅ローン契約時に一括支払う外枠方式と、金利に上乗せする内枠方式があり、保証料の相場は保証会社によって異なりますが、高い場合で借入金額の2.2%程度です。
物件調査手数料
全期間固定金利の住宅ローンフラット35を利用するときなど、購入予定の物件が融資基準を満たしているか調査をする場合があります。物件調査手数料は、おおむね5万円前後といわれています。
火災保険料・地震保険料
万が一建物が火災や台風、洪水などの天災で損害を受けた場合、火災保険に加入していれば修理代が支払われます。また火災保険は地震を原因とする損害が対象外のため、地震のリスクに備えるときは地震保険の加入も必要です。
火災保険料や地震保険は、物件の所在地、補償内容などにもよりますが、東京都内で木造、一戸建てで物件価格3,500万円とした場合、年間保険料は火災保険料が約2万円、地震保険料が約5万円です。
【物件別】住宅購入にかかる諸費用の目安
物件別に住宅購入にかかる諸費用の目安は次の通りです。
【物件の種類別諸費用の目安】
物件の種類 |
諸費用の目安 |
注文住宅 |
物件価格の3.0~7.0%程度 |
新築マンション |
物件価格の3.0~7.0%程度 |
中古一戸建て |
物件価格の6.0~10.0%程度 |
中古マンション |
物件価格の6.0~10.0%程度 |
以下物件種類別に、かかる諸費用の目安を紹介します。
注文住宅
物件価格5,000万円(土地価格:1,000万円、建物価格:4,000万円)で、住宅ローンの借入額が4,000万円の場合の諸費用を見て行きましょう。
【住宅購入にかかる諸費用】
- ・印紙税(売買契約書+建設工事請負契約書):2万円
- ・建物の所有権保存登記/土地の所有権移転登記:6万円/15万円 合計21万円
- ・司法書士報酬:10万円
- ・建物の表題登記※:14万円
※新築で必要な費用で、司法書士ではなく土地家屋調査士に依頼します。木造2階建て、延べ面積約150㎡の家の場合、費用の相場はおおよそ8万3,000円~14万5,000円です。
【住宅ローンの契約にかかる諸費用】
- ・金銭消費貸借契約書の印紙代:2万円
- ・融資事務手数料(2.2%の場合):88万円
- ・司法書士報酬:10万円
- ・抵当権の設定登記費用:4万円
- ・火災保険料/地震保険料:約2万3,000円/5万5,000円 合計約7万8,000円(年間)
諸費用合計158万8,000円
新築マンション
物件価格4,500万円(土地価格:1,200万円、建物価格:3,300万円)で、住宅ローンの借入額が3,000万円の場合の諸費用を見て行きましょう。
【住宅購入にかかる諸費用】
- ・印紙税(売買契約書):1万円
- ・建物の所有権保存登記/土地の所有権移転登記:4万9,500円/18万円 合計22万9,500円
- ・司法書士報酬:10万円
- ・修繕積立基金:50万円
【住宅ローンの契約にかかる諸費用】
- ・金銭消費貸借契約書の印紙代:2万円
- ・融資事務手数料(2.2%の場合):66万円
- ・司法書士報酬:10万円
- ・抵当権の設定登記費用:3万円
- ・火災保険料/地震保険料:約3,000円/1万2,000円 合計約1万5,000円(年間)
諸費用合計166万4,500円
中古一戸建て
物件価格2,600万円(土地価格:1,100万円、建物価格:1,500万円)で、住宅ローンの借入額が2,000万円の場合の諸費用を見て行きましょう。
【住宅購入にかかる諸費用】
- ・印紙税(売買契約書):1万円
- ・建物の所有権移転登記/土地の所有権移転登記:4万5,000円/16万5,000円 合計21万0,000円
- ・司法書士報酬:10万円
- ・仲介手数料(物件価格×3.0%+6万円)×1.1(消費税):92万4,000円
- ・固定資産税清算金:10万円
【住宅ローンの契約にかかる諸費用】
- ・金銭消費貸借契約書の印紙代:2万円
- ・融資事務手数料(2.2%の場合):44万円
- ・司法書士報酬:10万円
- ・抵当権の設定登記費用:2万円
- ・火災保険料/地震保険料:約3万4,000円/5万6,000円 合計約9万円(年間)
諸費用合計221万4,000円
中古マンション
物件価格2,000万円(土地価格:500万円、建物価格:1,500万円)で、住宅ローンの借入額が1,500万円の場合の諸費用を見て行きましょう。
【住宅購入にかかる諸費用】
- ・印紙税(売買契約書):1万円
- ・建物の所有権移転登記/土地の所有権移転登記:4万5,000円/7万5,000円 合計12万円
- ・司法書士報酬:10万円
- ・仲介手数料(物件価格×3.0%+6万円)×1.1(消費税):72万円
- ・固定資産税清算金:10万円
【住宅ローンの契約にかかる諸費用】
- ・金銭消費貸借契約書の印紙代:2万円
- ・融資事務手数料(2.2%の場合):33万円
- ・司法書士報酬:10万円
- ・抵当権の設定登記費用:1万5,000円
- ・火災保険料/地震保険料:約5,000円/1万2,000円 合計約1万7,000円(年間)
諸費用合計168万8,000円
住宅購入にかかる諸費用を抑えるコツ
住宅購入にかかる諸費用を抑えるコツは主に次の3つです。
- ・諸費用の低い住宅ローンを契約する
先にご紹介したシミュレーションの内訳をみると、住宅ローンの融資事務手数料やローン保証料が高いことがお分かりいただけると思います。住宅ローンを利用する金融機関を選ぶときは金利だけでなく、事務手数料やローン保証料も含めた総額で比較することが大切です。
- ・仲介会社を介さずに契約する
中古物件が新築に比べて物件価格に対する諸費用の割合が高いのは、仲介手数料の影響が大きいと考えられます。物件の選択肢が限られたり、物件を探す手間がかかる 可能性はありますが、少しでも諸費用の負担を減らしたい方は、分譲土地や建売など売主が直接売り出している仲介手数料がかからない物件を選びましょう。
- ・火災保険の不要な補償を外す
火災保険は火災以外にも、水災や雪災などさまざまな災害による損害を補償します。洪水による浸水の可能性が低い地域では水災特約を外したりと、不要な補償を外すこともできます。ハザードマップなどで、物件所在地で想定できるリスクを慎重に考慮しご検討ください。
まとめ
住宅は物件価格以外に、ローンの事務手数料や登記費用などさまざまな諸費用がかかります。住宅購入を検討する際は、物件価格や住宅ローン金利だけではなく、諸費用も考慮することが大切です。また、こうした諸費用は、やり方次第では金額を抑えることも可能です。
住宅購入は大きな買い物であることから、将来のライフプランに大きな影響を与えるため、少しでも不安のある方は、購入前に専門家に相談してみることもおすすめです。ANAの住まいでは住宅購入に関する相談を無料で開催しています。少しでも住宅購入に不安を感じている方は、ぜひご活用ください。